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Booz & Company


ブーズ・アンド・カンパニー  ヘルスケア・プラクティス 未来への論点シリーズ Vol.6
2010年8月


医薬品営業・マーケティングの複線化
~ライフステージに即した事業モデルの探求の時~
 
 新薬メーカーの事業モデルは、いままでほぼ単一であったといっても過言ではない。営業・マーケティングともに、部分的に新たな取組は進めてきたとはいえ、事業の基本的なモデルはここ数十年来変わっていない。
 
 基本的なモデルとは、言うまでもなく規模を効かせるパワーマーケティングとパワーセールスである。つまり巨額の広告宣伝費と大量のMRの投入である。
 
 ところがここへ来て、長らく市場と新薬メーカーの売上・収益の成長を牽引してきたブロックバスターの出現は影をひそめ、頼みの綱であったブロックバスターが相次いで特許切れを迎え(すなわち2010年問題)、各社は新たな成長源の獲得に躍起になっている。
 
 新薬メーカーにとっての新たな成長を目指す方向性は既に打ち出されている。最も重要なものは、スペシャリティ領域、生活改善薬、ジェネリック(バイオシミラーも含む)であろう。これらの方向性における成功要件は、いずれにおいても、従前の事業モデルが主対象としてきたプライマリー・ケア領域の製品とはまったく違うと考えるべきである。
 
 抗がん剤をはじめとするスペシャリティ領域はエビデンスが鍵であり、生活改善薬はそもそも市場を創らなければならず、ジェネリック(長期収載品を含む)はその低価格故に徹底的に広告宣伝・営業投資を抑えなければ利益が出ない。
 
 これら3つの領域はまた、製品の価値を訴える相手も従前の事業モデルにおけるそれとはもちろん違う。相手が違えばメディアも手段も違う。また、より問題を複雑にするのは、一つの製品のライフサイクルにおいて、最も効果的な営業・マーケティング手段が移り変わることだ。
 
 従来の単一事業モデルの大前提のもとで洗練された組織分業体制は、この新たな領域とライフサイクルマネジメントの二重の要件により、かつてなく大きなチャレンジに直面している。
 
 ライフサイクル上でステージが変われば(特許失効)、製品のオーナーシップのバトンタッチをしなければならない。営業体制も変わるから、バトンタッチはそう簡単ではない。
 
 この組織面でのチャレンジの克服には時間がかかる。長年に亘って築いてきた新薬メーカーの“ドミナント・ロジック”の慣性は大きい。如何に優秀な経営者とスタッフにとっても、このドミナント・ロジックをアンラーン(unlearn:捨て去ること)することは並大抵ではない。組織・体制の形は変えられても、仏像に魂を入れなければならず、その過程でむしろ当初は効率が下がることもある。変化に手を拱いている間、時間の経過と共に、製品のライフサイクル価値はこぼれ落ちて行く。
 
 ひとつの光明は、必ずしもドミナント・ロジックに当てはまらない異端児がどの製薬企業にもいることだ。あるハイパフォーマーMRに同行したことがある。担当エリア・病院にも担当疾病領域にも恵まれない若い彼がなぜ社内きってのハイパフォーマーなのかは、変革の必要性が明らかになった今となっては明らかだ。従来の型にとらわれず、いかにドクターが求めているものを的確に理解し、社内のあらゆるリソース(マーケティング、薬事、その他スペシャリスト)をフルに活用する術を、もちろん上司や同僚のやり方からも学びながら自分の頭で考え、技を磨いていったか、である。当時としては必ずしも彼は主流ではなかったが、おそらくどこの会社にでも(おそらくは辺境に)いるであろう才能を、今後はどう組織として活かし組織としての能力を高めていくか、そしてリーダーはそのために何をすべきか、に注意を払うときが訪れているように思う。



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