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Booz & Company


ブーズ・アンド・カンパニー  ヘルスケア・プラクティス 未来への論点シリーズ Vol.3
2010年6月


グローバル医薬品業界における新たな成長戦略の要件
マーガニック戦略(その1)
(既刊”Merge Ahead” by Booz & Companyより)
 
 製薬企業がすすめてきた規模の経済の追求を目的としたM&Aおよびこれを核とした成長戦略は、グローバル経済を呑み込む五つの大波の到来により、事業の要素間の有機的な結び付きの強さ(コヒーレンス)を重視した、適切な事業規模の追求へと進化を遂げつつある。
 五つの大波とは、一層巨大化する企業、スピードと焦りの蔓延、新興国の優良企業の台頭、新たな投資家、そして景気の波の振幅増大とバブルの頻発、である。
 コヒーレンスを欠いた規模の追求では、事業の要素間の相乗効果がなく、過去40年間にわたって支配的であったコングロマリット思考に過ぎない。
 コヒーレンスの強弱は多くの場合、M&Aディール遂行前後のプランニングと統合後のマネジメントが決定すると考えて差し支えない。
 グローバル医薬品業界の主要プレイヤーは、他の業界のリーディング企業と較べても、これまでにM&Aを梃子にした成長を多用してきており洗練度も高いが、コヒーレンスを担保した適切な規模の追求に成功した例は多くない。しかし数少ない成功例では、明確な戦略的意図を持って遂行したディールの価値を、ほぼ所期の目的を果たして実現し、新たな成長軌道に企業を導いているものもある。我々は、このようなコヒーレンスを担保した適切な規模の追求を外的および内的成長によって実現することを、“マーガニック(Merganic)”戦略と定義している。
 Merganicはmergerとorganicの合成語である。これは文字通り、外的成長と内的成長の融合を指すが、単に有機的成長とをベースに時に買収を行うというものではなく、異質で大きな組織をその潜在力を喪うことなく如何に円滑かつ迅速に“同化”できるかを問う新たな組織的力量のことである。
 これは端的にいえばPMI(pre-/post-merger integration)の巧拙であるが、如何にPMIをそつなく行うかというレベルに即物化・矮小化すべきなく、リーダーの資質や組織のメカニズムとして戦略と分かたず遂行できるか、がその本質である。
 Merganic戦略とは、この点において、既に多くの大型M&Aを目の当たりにしてきているグローバル医薬品業界にとり、とりわけ意義深い新たな成長戦略であり、今後は一層、M&Aをどれだけ行なうかではなく、どれだけ質の高いM&Aを内的成長手段と共に成長戦略の中に位置づけ、遂行していくか、が企業価値を高める上で、鍵となる差別化要因となってくる。
 我々の観点では、国内においてもこれまで多くのM&Aが実施されているが、今までのところ、コヒーレンスを担保している例は稀であり、Merganic戦略の難しさを物語ると同時に、それを成功裡に実行すれば優位に立てる可能性も示唆している。
 また、Merganic戦略とは、必ずしもM&Aを実施すべきというものでもなく、競合がより質の高い成長戦略を追求するのに対して、自社は果たしてどう持続的な事業の存続を図るか、を企業の規模の大小や事業ドメインを問わず、従前に増して真剣に再考することを問うものでもある。
(その2へ続く)



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